disruptive technologyとしてのソニー α7

破壊的テクノロジー=distructive technolgy とは、もう10年以上の前の本なのだが、ハーバード大学のクレイトン ・クレイテンセンが「イノベーションのジレンマ」と言う著書の中で書いていた理論=モデルである。
一世を風靡していた技術に対して、全く新しい技術がその従来の技術を凌駕してしまうことだ。
例としては、Quantum社とハードディスク。ハードディスクがまだ5インチだった
時代、社内の研究部門は容量は小さいながら3.5インチのハードディスクを生みだした。しかし同社のマーケティング部門は当時の優良顧客であるIBMらへのヒアリングの結果、「筺体が小さくなくて良いので、もっと容量を増やしてほしい。」と言う意見を受け入れ、3.5インチハードディスクの研究開発を中止した。当時の研究開発メンバーはConner社を設立し、Compaqのコンピューターの小形化と合わせて市場を席捲した。
トランジスターで構成される5インチよりICにより構成される3.5インチハードディスクは、当初こそ容量は5インチより少なかったが、技術進歩は著しく、あっと言う間に5インチの容量に追いつき、追いぬかす。シンプルな機構になる事で故障も減り、結果 パソコンの5インチベイのゲタを履かせた3.5インチハードディスクを取り付けるようになったのだった。
このような技術的な転換の事例は数多くあり、そして冒頭の論文をきっかけにこのような変革に対処する企業も現れた。
他の例としては、固定電話が携帯電話に駆逐されたり、ファックスが電車メールに起き変わったり、馬車が自動車に取って代わったり。カセットテープがMDに、MDがiPodに起き変わった。また企業として対象した例としては、Intel社の当時の副社長が、自社のCPU PentiumがAMD社の廉価版CPUに破壊的テクノロジーの脅威を感じて開発を指示したCeleronだ。

さて、このような事がカメラの世界でも起きている。もちろんフィルムカメラからデジタルカメラへの変革もそうだが、今回は一眼レフがミラーレスに駆逐されると言うことを書く。
それは、典型的な破壊的テクノロジーの事象が発生しているからだ。
例えば、ミラーが無くなることによりシャッターの高速化ができるようになった。また、センサーに常に光が当たる事で、シャッターを推した際に撮れる画像を事前に見ることが出来るようになった。真っ暗な場所での撮影でも、この設定で撮ると、写真としてのできあがりがどのくらいの明るさになるか、事前にわかるのだ。ミラーを使った光学処理ではできないものだ。そして、耐久性も忘れてはならない。ミラーがあるカメラだったら壊れてしまいそうな衝撃を与えても、稼動機構がほとんどないミラーレスカメラは壊れ難いのだ。実際に私は先日、カメラをおとしてしまったが、レンズのAFが壊れただけで、本隊は何も異常が無かった。
さらに、破壊的テクノロジーとは言えないが、ミラーがなくなった事によりフリンジバックが短くなり他社のレンズや古いレンズが使えるようになった事があげられる。この点では「フルサイズミラーレス」は非常に有利で、フィルム時代のフルサイズレンズがそのままフルスペックで利用できるのだ。

このように、多くの典型的な破戒的テクノロジーが見え隠れする状況であるから、おそらく現在の「デジタル一眼」はカメラの歴史にのおける過渡期的なものになるだろう。一方で、既存技術にあぐらをかいて破戒的テクノロジーに駆逐された起業も多い。幸か不幸かカメラメーカーは日本が上位を抑えている。この稚依を明け渡さないような企業としての取り組みも期待したい。
ただ、クレイテンセンは「まっとうな経営者は、破壊的イノベーションに直面したときに、それに乗換えらるような判断はしない」と言っているが。

(本も読み直さず記憶で描いているので、事実や記載と齟齬があったらお許し下さい。)

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